中国向けWebサイトのICPライセンスの話 #2

中国向けにWeb サイトを構築する場合、ICP ライセンスが必要です。 SBクラウドさんより”【徹底解説】中国向けWebサイトの基礎知識”という3つのコラムが公開されています。 インバウンドや中国ビジネスなど中国本土に向けたWebサイトを検討されている方には必読の内容となっています。

今回は③の”【徹底解説】中国向けWebサイトの基礎知識③ICPライセンス不要でWebサイトを開設する方法” の内容を起点に、中国本土へのWebサイト展開をどうすすめるのがよいか自分なりに整理してみました。

1. ICP ライセンスが不要となるケース

SBクラウドさんのブログでも言及されているとおり、中国本土外にWebサーバを構築することでICP ライセンスは不要となります。ICPは中国の制度だからです。

その際のポイントは以下になります。

  1. 利用者への応答性、中国内の検索エンジンの評価を考慮すると”香港”が最適
  2. 中国外にWebサーバがあってもCDNなど実質中国内での公開となる場合はICP ライセンスは必要

2. 中国向けWebサイト展開の早見表

中国向けWebサイト展開を行うための簡単な早見表を作ってみました。

ユースケースAlibaba Cloud ソリューションICP
中国に現地法人を持たない香港リージョンにWebサイトを構築不要
中国に事務所あり中国本土リージョンにWebサイトを構築し、ICP ライセンスを取得必要
ECやオンラインビジネス 中国本土リージョンにWebサイトを構築し、 商用ICP ライセンスを取得必要
中国全土に展開
(静的コンテンツ)
Alibaba Cloud CDN の活用必要
中国全土に展開
(動的コンテンツあり)
Alibaba Cloud Dynamic route for CDN の活用必要
中国本土外のサーバを中国に公開Alibaba Cloud Global Acceraion 、Express Route、CEN の活用必要

3. 香港リージョンのWebサーバの構成例

実際に香港リージョンにWebサイトを構築する場合のAlibaba Cloud のプロダクトの構成をサンプルとして作ってみました。

3.1. スモールスタート

200GBのデータ転送量(クラウドからインターネットへ出る通信)込みの月額定額となるスターターパッケージの構成。 スモールスタートやPoCなどに最適です。

プロダクト数量単位課金単価
(円)
小計
(円)
Elastic Compute Service
・スターターパッケージ Light
・Linux
・1core
・2GBメモリ
・40GB Disk,
・200GB データ転送量
1月額 5,000 5,000
Object Storage Service
・Action Trail ログ
・5GBまで無償
0GB従量00
スナップショットバックアップ(64世代)※無償 00
Cloud Monitor ※無償
・監視
00
小計5,000

3.2. 本番環境

CMSなどの動的コンテンツを提供しある程度のアクセス数が見込まれるWebサイトを想定した構成。  Web Application Firewll (WAF)でセキュリティを強化しています。 また、サーバはシングル構成ですが、物理サーバ障害時には正常な物理サーバで自動的にECSインスタンスは再起動され、バックアップは64世代を無償で取得可能です。 

プロダクト数量単位課金単価
(円)
小計
(円)
Elastic Compute Service
・ecs.ce4.xlarge
・Linux
・4core
・16GBメモリ
1月額 15,500 15,500
クラウド Ultra ディスク200GB月額5.91,180
データ転送量1,000GB従量16.8316,830
スナップショットバックアップ(64世代)※無償00
Cloud Monitor ※無償
・監視
00
Web Application Firewall
・Professoinal
1月額34,39034,390
Object Storage Service
・Action Trail ログ
・5GBまで無償
0GB従量00
小計67,900

上記の構成例には含めていませんが、Alibaba Cloud の以下のプロダクトも連携可能です。

  • SSL Certificates
    • Entrust のEV/OV証明書をAlibaba Cloudから購入
  • Apsara Video Live
    • ビデオストリーミング
  • Database Backup Service
    • マネージド型のデータベースバックアップ
  • Log Service
    • OSログ、Webサーバログの集約と可視化

さらに可用性向上ないしは性能向上のためにフロントエンドサーバを冗長化(静的 or Auto Scacaling)することも可能です。このときデータベースにApsaraDB for RDS を利用することでDBを冗長化しつつ、RedisやMemecacheを利用することで性能向上も同時に実現することが可能になります。

さならる性能向上(スループット向上)という観点ではCDNがもっとも有効ですが、中国本土の展開にはICP ライセンスが必要となる点に注意が必要です。(せっかく香港リージョンにWebサーバを立ち上げているにもかかわらず)

4. まとめ

SBクラウドさんのブログを参考にしつつ、中国へのWebサイト展開を整理してみました。 実際の現場において“Alibaba Cloudの香港リージョン”にWebサイトを構築している事例は色々とあるのですが、なぜAlibaba Cloud の香港リージョンが選ばれるのでしょうか。

他のメガクラウド(AWS/Azure/GCP)でも香港リージョンは提供されています。そんな中Alibaba Cloud が選ばれたポイントは以下の3点になると考えます。

  1. 将来の中国本土展開を簡単、スムーズに行える
  2. 安くて早い
  3. LAMPが動けば良い

1点目ですが、まずは香港リージョンでスモールスタートし、ニーズが高まった場合の中国本土への展開が簡単に行えるということがあります。 例えば、中国本土の8リージョンにWebサーバを展開することも、Alibaba Cloud DNSやGlobal Traffic Manager で地理冗長を構成することも、各リージョンを専用ネットワーク(Express ConnectやCEN)で接続しデータ同期やDR/BCPを構成することも、CDN/DCDNに利用した中国全土への展開することも、すべてAlibaba Cloud で完結することが可能です。 そしてのその支払いを日本で行うことやそのためのサポートを日本で受けられることも他メガクラウドにはない唯一の強みだと思います。

2点目ですが、これは言葉の通りで安いです。 仮想マシンのECS では他メガクラウドと比較すると安価なケースがほとんどです。 さらにAlibaba Cloud のECSでは64世代の無償のバックアップが利用出来たり、仮想マシン1台からSLA99.95%が適用される、ディスクが安くて早いなど細かい点を含めて、お客様はそのコストパフォーマンスを評価することが多いように思えます。

3点目、よくある話として環境を構築、運用するベンダーさんがAlibaba Cloud よりもAWSを得意とする場合です。 Webサーバ以外では実績や初学のコストの観点からAlibaba Cloud の評価があがらないことがあります。 一方、Webサーバについてはベンダーさん視点でクラウドの違いは許容範囲のようです。 PaaSとなると話は違うと思いますが、IaaSでOSが動いてしまえばクラウド間の違いはたいしたことはないということだと思います。 まあ、PaaS の採用がこれから進んでいくとクラウドロックイン?の心配も出てくるとは思います。

長々と書きましたが、中国向けのWebサイトにはAlibaba Cloud が良いよという話でした。