Alibaba Cloud の認定資格 “ACP Cloud Computing Certification” を受験し、合格しました。 試験の概要や受験にあたってのポイントなど紹介します。
ACP Cloud Computing は2回目の受験です。 1回目は 2018年1月か2月に受験し合格していました。その時の得点は60点台後半でギリギリだった記憶があります。 私自身、クラウド のエンジニアに転身したのが2017年10月。 したがって2018年1月というとクラウドエンジニアとしてもまたAlibaba Cloud の経験もわずか数か月だったころです。 今回の得点は 83点でした。 試験対策は何も行わずに受験したのですが自分の成長を実感できました。
なお、今回2回目を受験した理由は Alibaba Cloud MVP の特典で ACP 受験用のバウチャーが提供されたためコスト負担が無かったことがありました。前回の受験が約2年半も昔ということもあり最新の情報で記事を書きたいということもあり。
目次
1. Alibaba Cloud の試験の全体像
Alibaba Cloud の認定資格の概要は過去の記事でも紹介していますが、試験が増えたり色々変わっているので最新の情報を整理しました。
1.1. 試験に関する情報源
試験に関する情報は Alibaba Cloud の公式サイト “https://edu.alibabacloud.com/certification” になります。 日本語のページは残念ながらありません。
1.2. 提供されている認定
Alibaba Cloud では大きく3つの認定を提供しています。
こちらが今回の記事で扱う Professional 向けの認定です。
専門スキルの認定で詳しくはこちら。
こちらは 特定プロダクトや特定プロダクトの特定機能に範囲を絞った認定で、Alibaba Cloud の言うところの軽めの認定(light-weighted certification)です。 以下のスクリーンショットでは見切れている位沢山あります(以下の3画面分くらい、約120個)。
有償のもの、無償のもの(数は少ないですが)、また、大幅にディスカウントしているものがあります。
実際どんなものか具体的に紹介します。 適当に選んだ “Best Practice To Protect Your Servers On Alibaba Cloud” を購入します。 0.01 USD にディスカウント中のコンテンツです。 Alibaba Cloud MVP の特典のクーポンで購入します。
コンテンツの中身は大きく2つです。 e-learning と テストです。
e-learning のイメージは以下。6つのLession で合計 50 分のコンテンツです。
スライドを解説するe-learning コンテンツです。 英語のみの提供です。 私は英語は得意ではありませんが、話す速度はゆっくりで聞き取りやすく、十分理解できるものでした。
テストはオンラインで受験可能です。 今回のは15問で30分の試験時間です。 今回は上の e-learning は実施せずにテストに進みます。 落ちたら e-learning で勉強すればよいわけです。
15問ということで10分程度で終了し、何とかパス。 何問か回答に自信を持てないものもありました。 今日受けてきた ACP の問題とあまり変わらないレベル、いや、ACP よりも深い知識を問う問題が多かった印象です。
この後、認定書やバッチのダウンロードを行うことが可能となります。 Twitter をみているとこの Apsara Clouder Techinical Certification のXXXに合格した!のつぶやき結構ありますよね。
1.3. Professional で提供されている試験
認定試験は3つの区分があります。また、それぞれに Associate / Professional / Experts の3つのレベルが提供されています。 今回は Cloud Computing の Professional を受験しています。
2. ACP Cloud Computing Certification について
本題となる Cloud Comuting のACP についてです。 この試験の内容を知るには公式サイトでダウンロードできる アウトライン資料を確認します。
シラバスの PDF がダウンロードできます。
中身は英語ではありますが翻訳ツールなど使って日本語で読むのもよいかと思います。 なお試験は日本語で受験することも可能です。
シラバスの内容のポイントは以下になります。
- ACP 試験は アーキテクト、開発者、O&M担当者向け
- 以下のAlibaba Cloud のプロダクトが対象(以下だけ抑えればOKということ)
- ECS
- RDS
- SLB
- OSS
- VPC
- Auto Scaling
- CDN
- Security
- Cloud Monitor
- 上記の各プロダクト毎に問われる内容も具体的に列挙されている (VI. Scope of content)。 このセクションは必ず読んでおきましょう。
- Alibaba Cloud 以外の一般的なIT 知識
- クラウドコンピューティングとその実現に必要な仮想化、ストレージ、ネットワーク
- Web アプリケーションに関する知識
- プロトコル(HTTP, FTP, TCP, UDP,ICMP)
- セキュリティ (Firewall, 暗号化, 攻撃とその防御)
- 試験時間は 90分 (それぞれの問題は短文なのでサクサク進みます。私は30分かかりませんでした)
- 問題数は 70問 (記憶違いかもですが80問以上あったような・・・)
また、カテゴリーごとの配分も公開されています。
Product name | 割合 |
---|---|
ECS | 20% |
RDS | 15% |
OSS | 15% |
Auto Scaling | 10% |
Server Load Balancer | 10% |
Virtual Private Cloud | 10% |
Alibaba Cloud Security Service | 10% |
Content Distribution Network | 5% |
General knowledge about Cloud Computing | 5% |
上でも書きましたが “VI. Scope of content” に各プロダクト毎にスコープとして試験で問われる内容が具体的にリストアップされています。 以下は ECS に関するものです。 この内容を見て全く見当もつかないものがあればそれは事前に学習なり実環境で触っておきましょう。 翻訳ツールを使ってもよいのでこの章は一読しておきましょう。
✓Familiar with ECS-related concepts, including regions and zones, instances, disks, snapshots, images, networks, and security groups.
✓ Has knowledge about the advantages, billing policies, application scenarios, APIs and SDKs of ECS.
✓ Able to deploy applications based on ECS products.
✓ Familiar with the usage and operations of ECS instances, disks, security groups, snapshots, images and tags.
✓ Able to discover and resolve common problems arising during the operating system usage, server logons, and use of other ECS instance products.
✓ Able to implement application solutions based on ECS, RDS and Server Load Balancers, VPCs, OSS, CDN, Auto Scaling, Alibaba Cloud Security and CloudMonitor products.
3. 試験の対策
冒頭書いた通り、私自身試験の対策は何も行っていないのですが、これまでの2回の受験経験からお勧めする受験対策をまとめました。
3.1. マニュアルを読む
Alibaba Cloud のマニュアルは Document Center にあります。 試験範囲となる以下の製品についてまずは Product Introduction だけ読みましょう。 各プロダクトの役割や目的を頭に入れます。 ACP の試験では具体的な設定が問われるケースは少ないということがありますし、最低限どんな機能を持っているか抑えておきましょう。 Product Introduction と Quick Start、あとはFAQあたりを確認しましょう。
- ECS
- RDS
- SLB
- OSS
- VPC
- Auto Scaling
- CDN
- Security
- Cloud Monitor
上記のURL のDocument Center は英語です。 日本語でマニュアルを読みたい!という場合は、日本サイトのホームページで確認することも可能です。
Alibaba Cloud が日本で提供を始めた時、日本サイトという概念があり公式ホームページやそこで提供されるドキュメントのローカライズも行われていました。 Cloud Computing で提供されているプロダクトに関するマニュアルはこのサイトであれば日本語版があります。
3.2. 本を読む
秀和システムより “Alibaba Cloud構築・運用完全マニュアル” が提供されています。 私も購入しました。 412ページにわたる内容で数少ない(唯一?)のAlibaba Cloud の書物です。
目次も秀和システムのサイトから確認できます。
Chapter 1 Alibaba Cloud入門 1-1 Alibaba Cloudとは何か Alibaba Cloudについて Alibaba Cloudのオリンピック構想 1-2 Alibaba Cloudが出来た背景 Alibaba Cloud成立の経緯 1-3 Alibaba GroupとAlibaba Cloud Alibaba Groupのサービスラインナップを補完するAlibaba Cloud 1-4 Alibaba Cloudサービスの全体像 105個のサービス・製品ラインナップを有するAlibaba Cloud 主要な製品群 1-5 世界で使われるAlibaba Cloud 世界に広がるAlibaba Cloud 世界中にあるデータセンター Alibabaクラウド製品領域(グローバル対応) 1-6 2018年世界第3位の躍進とこれから 世界第3位のIaaSプロバイダーと中国国内1位の実力 APAC圏では2年連続シェア第1位のAlibaba Cloud Chapter 2 Alibaba Cloudを始めよう 2-1 Alibaba Cloudサービスの概要 多彩な製品やサービスで構成されるAlibaba Cloudのユニークな製品群 Image Search Anti-DDoS Premium 2-2 サービスの使い方 Alibaba Cloudのサービスの使い方 2-3 Alibaba Cloudのセキュリティ体制 Alibaba Cloudのグローバルセキュリティ体制 Alibaba Cloudのリージョンごとのセキュリティ体制 Alibaba Cloudのセキュリティ・ソリューションとベスト・プラクティス 2-4 Alibaba Cloudのコンプライアンス体制 業界毎のコンプライアンス対応状況 金融セクターの規制遵守に関する詳細情報 プライバシー保護 2-5 アカウントの作成 アカウントの作成には二種類ある Alibaba Cloudのアカウントを削除する その他参考情報 2-6 料金の支払い方法 プリペイド及び従量制等の柔軟な購入オプションがあるAlibaba Cloud 2-7 Alibaba Cloudのサポートを使う Alibaba Cloudのサポートとは? Chapter 3 仮想サーバサービス 3-1 仮想サーバサービス 仮想サービスの概要 なぜクラウドに移行するのか(メリットは何か)? 3-2 Elastic Compute Service ECSとは ECSの利点 ECSの始め方 3-3 Elastic GPU Service (EGS) EGSとは EGSの適用分野 特徴 一般的なシナリオ EGSの始め方 3-4 Auto Scaling Auto Scaling とは Auto Scalingの利点 スケーリングモード 制限 Auto Scalingの始め方 3-5 Resource Orchestration Service (ROS) ROSとは ROSの利点 ROSの始め方 3-6 Container Service Container Serviceとは Container Serviceアーキテクチャ Container Serviceの利点 Container Serviceの始め方 3-7 E-HPC E-HPCとは E-HPCの利点 E-HPCの特徴 E-HPCの始め方 3-8 ECS Bare Metal Instance ECS Bare Metal Instanceとは ECS Bare Metal Instanceの利点 ECS Bare Metal Instanceの始め方 3-9 Super Computing Cluster (SCC) SCCとは SCCの利点 SCCの始め方 3-10 Dedicated Host(DDH) DDHとは DDHの利点 DDHの始め方 Chapter 4 ネットワークサービス 4-1 Virtual Private Cloud (VPC) VPCとは? VPC接続 アーキテクチャ 利点 用途 用語 制限 VPCの作成 4-2 Express Connect Express Connectとは? シナリオ 制限 用語 物理的な接続を確立する 4-3 Alibaba Cloud DNS Alibaba Cloud DNSとは 特徴 利点 ドメイン名の追加・管理 レコードの追加と管理 advanced DNSを有効にする その他参考情報 Chapter 5 データベース 5-1 ApsaraDB RDS for PostgreSQL ApsaraDB RDS for PostgreSQLとは PostgreSQL用のRDSインスタンスを作成 ホワイトリストを設定 インターネットアドレスを申請する データベースとアカウントを作成する 利用例 その他参考情報 5-2 Database Backup (DBS) DBSとは 利点 シナリオ バックアップモード バックアップ計画の作成 バックアップ計画の設定 バックアップ計画の表示 データベースのリカバリ その他参考情報 Chapter 6 ストレージとCDN 6-1 Alibaba Cloud CDN Alibaba Cloud CDNとは Alibaba Cloud CDNノード Alibaba Cloud CDNの利点 Alibaba Cloud CDNの始め方 6-2 Object Storage Service (OSS) OSSとは OSSの利点 OSSの始め方 6-3 Network Attached Storage (NAS) NASとは NASの利点 NASの機能 NASの特徴 NASの始め方 6-4 Data Transport Data Transportとは Data Transportの利点 6-5 Dynamic Route for CDN Dynamic Route for CDNとは Dynamic Route for CDNのメリット Dynamic Route for CDNの始め方 Chapter 7 ビッグデータ分析 7-1 DataWorks DataWorksとは 機能の概要 活用シーン 基本用語 データ開発プロセス クイックスタートの概要 準備 クイックスタートの各手順 ステップ① ローカルファイルをアップロードする ステップ② タスクを作成する ステップ③ データ同期ジョブを作成する ステップ④ スケジューリングと依存関係の設定 ステップ⑤ 定期的なO&Mを実行し、 ログのトラブルシューティング結果を表示する その他参考情報 7-2 DataV DataVとは DataVエディション DataVの特徴 DataVのコンセプト クイックスタート DataVの利用例 7-3 Data Integration Data Integrationの概要 Data Integrationタスクを作成する 用語 7-4 Image Search Image Searchとは Image Searchの種類 Image Searchの利点 Image Searchの利用シーン クイックスタート OSSとImage Searchを連携する Image Searchの機能をテストする Image Searchをなぜ使うのか 画像検索エンジンの仕組み 適用出来るカテゴリの種類 Chapter 8 アプリケーションサービス 8-1 Message Service Message Serviceとは Message Serviceの始め方 8-2 Log Service Log Serviceとは Log Serviceの利点 Log Serviceの始め方 8-3 API Gateway API Gatewayとは API Gatewayの利点 API Gatewayの始め方 8-4 Blockchain as a Service (BaaS) BaaSとは BaaSの利点 BaaSの始め方 Chapter 9 メディアサービス 9-1 ApsaraVideo for Media Processing ApsaraVideo for Media Processingとは ApsaraVideo for Media Processingの機能 ApsaraVideo for Media Processingのメリット ApsaraVideo for Media Processingの始め方 9-2 ApsaraVideo Live ApsaraVideo Liveとは ApsaraVideo Liveの特徴 ApsaraVideo Liveの利点 ApsaraVideo Liveの始め方 Chapter 10 セキュリティ 10-1 Anti-DDoS Basic Anti-DDoS Basicとは Anti-DDoS Basicの特徴 Anti-DDoS Basicのメリット Anti-DDoS Basicの始め方 10-2 SSL Certificates Service SSL Certificates Serviceとは SSL Certificates Serviceの機能 SSL Certificates Serviceの利点 SSL Certificates Serviceの始め方 10-3 Web Application Firewall (WAF) WAFとは WAFの特徴 WAFの利点 WAFの始め方 Chapter 11 IoT 11-1 IoT Platform IoT Platformとは IoT Platformの特徴 事例紹介 |
今回の試験範囲のプロダクトも一通りそろっておりこの本を読むだけで試験の対策も十分なのではないかとも思います。
3.3. Alibaba Cloud Academy の e-Learning
以前の記事でも紹介していますが e-Learning が提供されています。そして今なら非常にお得な価格(199 USD → 0.99 USD)で購入することが出来ます。 スライドとスピーカの言語が英語という点はありますが、440分のコンテンツが100円ちょっと、これで試験の範囲を一通り抑えることが可能です。
3.4. 試験対策のまとめ
試験のNDA もあるので問題の中身をそのまま紹介するわけにはいかないのですが、本日受験しての所感は以下。 基本はシラバスの”VI. Scope of content”の通りです。
- 20% と一番割合の高い ECS について単純に機能を問うような問題は少ない。 他プロダクトとの連携などが問われる。
- Auto Scaling は具体的な構成について何問も問われる。 どんな条件でスケールできるのか、クールダウンのときにできること・出来ないことなど。
- RDS は概念を問われるものが多い。 RDS はMySQL や PostgreSQL、MS SQL Server 、PPASなど幅が広いプロダクトということもあるがそれぞれどんな機能をもち、どう冗長化できるのか、どうバックアップできるのか、どう移行出来るのか、など。
- CDN は Alibaba Cloud に限らず CDN の常識を問われる
- SLB は Auto Scacling との連携、ヘルスチェックの仕様などが問われる
- OSSは他クラウドでも良く問題がとなるセキュリティのかけ方
- VPCは その構成要素(vRouter やVSwitchなど)と役割
試験のレベル的には Alibaba Cloud または AWS の経験を持っていればマニュアルを読むだけで合格出来ると考えます。 よく言われる”実環境を触る” の星を3つにしたのは、あまり良い教材がなかったためです。闇雲に触ってもあまり効率が良くないなと。 そんな中あえて言えば Auto Scaling と RDS は実際にやってみた方が試験に役立つとコメントしておきます。 Auto Scaling はマニュアルのクィックスタートをやるだけで実際のイメージが頭に入ると思います。 e-Learning は英語が障害にならなければ星は増えます。
対策 | お勧め度 |
---|---|
マニュアルを読む | ★★★★☆ |
本を読む | ★★★☆☆ |
e-Learning | ★★☆☆☆ |
実環境を触る | ★★★☆☆ |
4. まとめ
今回、Alibaba Cloud MVP Platinum Tier の特典である ACP の受験クーポンを利用し ACP を受験しました。 そのクーポンの消費ということもありましたが、これから Alibaba Cloud を始める人やある程度経験を積んだ人がAlibaba Cloud が提供する認定資格がどういうものか知ってもらったり、受けてみようという時に少しでも参考になればと思い記事を書きました。
あと今回の記事を書く中で1つ気づきがありました。 “Apasara Clouder Technical Certifications” です。 1時間弱のe-Learning と オンラインのテストのセットが大体10 USD 、中にはディスカウントされて0.01 USD で提供されているのですがテストがそれなりに難しくよいトレーニングになるなと。 1時間弱の e-Learning も丁度良い感じです。 そしてその先にあるのは Expert 認定の ACE です。 過去にACE を受けてFail しているのですがこの試験、個人的にかなり難しくちゃんと準備しないと受からないなぁ、でもどう準備すればよいか見当つかないなぁ、ということで再チャレンジ出来ていませんでした。 実プロジェクト&現場で経験積めればいけそうなのですがそうも出来ない状況だったり、どちらにせよ一夜漬けでは無理だなという実感。 そんな中、”Apasara Clouder Technical Certifications” をコツコツと実施していき、その過程で “Specialty Accreditation” も消化していけば ACE の合格につながるのではと光明を見いだせた感じです。 120もコースはありますが、、、Cloud Computing に限れば60ちょっと、苦手・弱い領域が半分と考えれば30コース、30時間頑張ってみようかなと。
以上