このwebサイト(https://bigriver.jp)はAlibaba Cloud の日本サイト上で提供していました。 今回、Alibaba Cloud の国際サイトへの移行を進めることを決めたので移行の過程を紹介します。
移行には Alibaba Cloud が提供するサーバ移行ツール Server Migration Center を利用しました。 このツールは Alibaba Cloud から Alibaba Cloud だけではなく様々な移行元に対応するとても便利なツールとなっています。
記事は以下の3つで構成されています。
目次
1. 移行方式
まずは、移行方式を検討しました。
現在、以下のプロダクトをAlibaba Cloud の日本サイト上で利用しています。
- Alibaba Cloud ECS
- Alibaba Cloud DNS
- Alibaba Cloud Log Service
- Alibaba Cloud OSS
それぞれの移行方式を考えます。 ECSはAlibaba Cloud が提供するツールで移行出来そうです(詳細は後述)。 DNSは上位DNSでの切り替えもあるのでいったん後回しにします。 Log ServiceとOSSは再構築することにします。
プロダクト | システム | 用途 | 移行方式 |
---|---|---|---|
ECS | Webサーバ | https://bigriver.jp/ | ツールを利用 |
ECS | Active Directory | Microsoft 365 のAzure ADのオブジェクト同期(Azure AD Connect) | ツールを利用 |
DNS | – | bigriver.jp の権威DNS | 移行しない(後で移行する) |
Log | – | https://bigriver.jp/のログ収集 | 再構築 |
OSS | – | 実験用 | 最構築 |
2. ECS の移行ツール
ECS の移行ですが、Alibaba Cloud の国際サイトではSMC (Server Migration Center)という移行ツールが提供されているようです。 このツール自体は移行元サーバに物理環境や他クラウドのサーバも対応出来るようですが今回はAlibaba Cloud からAlibaba Cloud への移行に利用します。
2.1. SMC
まずはSMCのマニュアルを確認します。
- Whati is SMC?
- Alibaba Cloud が開発したツール
- 移行元は物理サーバ(P2C)、仮想サーバ(V2C)、他クラウドサーバ(C2C)に対応
- On-premises virtual machines include VMware, Virtual Box, Xen, and KVM. Third-party cloud platforms include Amazon AWS, Microsoft Azure, Google GCP, Huawei Cloud, Tencent Cloud, UCloud, Telecom Cloud, QingCloud, and so forth.
- 増分データコピーによる移行に対応
- 複数の移行タスクの実行
- データ転送の多重化に対応
- https://www.alibabacloud.com/help/doc-detail/121581.htm
OSの対応は以下の通り。 Windows Server 2019やRHEL8など最新OSへの対応はこれからのようです。
Windows | Linux |
---|---|
Windows Server 2003 Windows Server 2008 Windows Server 2012 Windows Server 2016 | Amazon Linux 2014 and later CentOS 5/6/7 Debian 7/8/9 Gentoo 13.0 OpenSUSE 13.1 Oracle Linux 5/6/7 Red Hat 5/6/7 SUSE 11.4/12.1/12.2 Ubuntu 10/12/14/16/17 |
https://www.alibabacloud.com/help/doc-detail/121598.htm
2.2. イメージの共有
今回は日本サイトから国際サイトへの移行ということでプラットフォームはAlibaba Cloud で共通です。
日本サイトのマニュアルでは以下の通り紹介されています。 今回のケースですと “異なるアカウントで 同じリージョンにイメージを共有する” の方式を利用することになります。
シナリオ | 手順 | 説明 |
---|---|---|
同じアカウントで別のリージョンにイメージをコピーする | イメージをコピーする を参照。 | イメージがコピーされると、対応するスナップショットがターゲットリージョンに即座に作成されます。 コピー操作が完了すると、固有のイメージ ID を持つ新しいイメージがターゲットリージョンに生成されます。 |
異なるアカウントで別のリージョンにイメージをコピーする | イメージをコピーするおよびイメージを共有するをご参照ください。 | イメージをターゲットリージョンにコピーし、ターゲットアカウントに共有します。 |
異なるアカウントで 同じリージョンにイメージを共有する | イメージを共有するをご参照ください。 | この操作では、新しいイメージは作成されません。 共有後もイメージの所有者は変わりません。 |
https://jp.alibabacloud.com/help/doc-detail/25462.htm
SMCを使わずともECSのイメージを共有し国際サイトのアカウントからそのイメージを利用する方式のほうが簡単にも思えますが勉強がてらSMCを使ってみることにします。
2.3. カスタムイメージのエクスポート&インポート
イメージの共有による方式に加えてエクスポート&インポートする方式も提供されています。 共有では日本サイトで作ったイメージをダイレクトに国際アカウントで参照しますがエクスポート&インポートでは一端イメージファイルをダウンロードする点が異なります。
参考までにカスタムイメージのエクスポートは以下のマニュアルで紹介されています。 サポートチケットによる申告が必要なようです。 これでイメージを日本サイトからダウンロードし、国際サイトへインポート、インポートしたイメージからECSを立ち上げることが出来そうです。
https://jp.alibabacloud.com/help/doc-detail/58181.htm
2.4. Cloud Migration Tool
また、日本サイトのマニュアルではCloud Migration Tool による移行方式も紹介されています。
https://jp.alibabacloud.com/help/doc-detail/62349.htm
こちらはSBクラウドさんブログでも紹介されています。
3. 移行の流れ
SMCによる移行を以下の通り計画します。
- Alibaba Cloud 国際サイトのアカウント開設 (実施済)
- 国際サイトでSMC を有効化
- 国際サイトでRAM を有効化
- 国際サイトでAccess Key を生成
- SMCクライアントを移行元サーバにインストール
- SMCクライアントを移行元サーバで実行
- DNSのAレコードを更新しbigriver.jpの接続先を変更
詳しくは以下のマニュアルを参照。
https://www.alibabacloud.com/help/doc-detail/122975.htm
4. 国際アカウントへ移行することのメリット・デメリット
Alibaba Cloud の国際サイトへ移行するメリットとデメリットを簡単にまとめました。 今回はこのブログのWebサイトの移行についてフォーカスしているので実際にやりたいことや利用するプロダクトによりメリット&デメリットの観点は変わります。
- メリット
- ECS のReserved Instance を利用することでコストダウン
- ECS で比較しても日本サイトよりラインナップ、機能が優れている
- ECS 以外でも日本サイトより沢山のプロダクト、機能を利用できる
- デメリット
- サポートプランが変わる
- 日本サイトは1プランのみ、無償で24/365の日本語対応
- 国際サイトは4プラン、無償はBasicで24/365、6Tickets/Quarter、日本語未対応?
- ドキュメントは基本英語
- 中国リージョンを利用する場合は実名認証が必要
- サポートプランが変わる
デメリットの英語対応は今回の用途であれば特に困ることはなさそうです。サポートも同様に問題なし(日本サイトを1年近く利用指定していますがサポートを使ったことはほぼない)、中国リージョンも利用していないのでこれも問題なし(中国でWebサイトを立ち上げるにはICPが必要でそっちのハードルは個人では高すぎますし)。
5. 日本サイトと国際サイトのサポートの違い
デメリットであげたサポートの違いについて簡単に説明します。
国際サイトにサポートの比較表があります。 日本サイトの無償サポートは国際サイトのDeveloperに近い感じでしょうか。 デメリットとはしましたがBusinessやEnterpriseなどを利用することで日本サイトでは提供されていないより深いサポートを受けることが出来るという点は国際サイトのメリットといえます。
また、プライスリストも公開されています。 Basicは無償ですが、Developerからは有償です。
次回は実際のSMCを利用して日本サイト上のECS を国際サイトへ移行します。
以上